安保法制違憲訴訟意見陳述書

 

                      2017年7月12日

 

                 原告訴訟代理人弁護士 後 藤 好 成

 

 

 

 私たちはなぜこの裁判を提訴したのか。

 

 それは、新安保法制の適用により、将来我国が他国間の戦争に巻き込まれ私たちが再び戦争の加害者となり被害者ともなるようなことは二度とくり返したくない。そう考えたからです。

 

 一昨年に成立した新安保法制は、我国が攻撃を受けなくとも他国の攻撃から同盟国を守るために他国間の戦争に参加できるという集団的自衛権の行使を認めるものとなっています。

 

 ベトナム戦争では、集団的自衛権行使の名のもとにアメリカの同盟国として戦争に参加した韓国軍はベトナムの幾万の人々を殺戮し、従軍した兵士約5千人が犠牲となりました。

 

 このような集団的自衛権の行使が、戦争の永久放棄を誓い国際紛争解決の手段としての武力の行使を一切禁じた憲法9条に違反していることは誰の目にも明らかです。

 

 私たちは、この憲法が、我国で310万人、アジアで2000万人ともいわれる未曽有の犠牲を出した第二次世界大戦の惨禍を経て、もう二度と戦争はしないという日本と世界の人々の固い決意の中で生みだされたものであることを忘れてはなりません。

 

 憲法に明記された不戦の誓いは、戦争であまたの同胞を失い、街を、家を戦火で焼かれる等、戦争の惨禍を身をもって体験した私たちの両親、祖父母たちの心からの願いがこめられたものでした。

 

 こうして私たちの先達が血のにじむ思いで憲法に刻んだ不戦の誓いは、今日、私たちがこの手でしっかり受けつぎ次の世代にひきつぐべき宝といわねばなりません。

 

 制定以来、70年近くも多数の国民によって支持され、歴代の内閣も維持しようとしてきたこの憲法の平和への誓いが、一内閣の解釈変更や理不尽な強行採決で奪われていいはずがありません。

 

 私たちは、裁判所がこのような集団的自衛権を柱とする新安保法制が憲法9条に違反することを明確に宣告された上、この新安保法制によって、憲法が保障する平和への権利が蹂躙され、耐え難い不安と精神の苦痛を受けている原告らの請求を認められることを切に求めます。